技術情報
技術情報
鍛造用語集
鍛造用語集【さ】
再結晶 | 加工によってひずみを受けた結晶が、適当な温度に加熱されることにより、ひずみを受けない新しい結晶が生じ、それがしだいに発達し、その数を増やすことにより、全体が新しい結晶粒と交替する現象。冷間鍛造によって加工硬化した材料の成形性を回復するために、再結晶焼なましがしばしば行われる。 |
材料きず | 鍛造品の表面又は内部に、素材材料の欠陥が残存したために生じたきず。 |
材料試験 | 機械試験と材質試験がある。機械試験は、強さ靱性、延性、硬さなどを調べる試験で、引張試験、曲げ試験、抗折試験、硬さ試験、疲れ試験、クリープ試験、リラクゼ—ション試験などがあり、材質試験は、マクロ及びミクロ組織、結晶粒度、化学成分、偏析、非金属介在物、地きずなどの品質を調べる試験で、組織試験、粒度試験、非金属介在物の顕微鏡試験、地きずの肉眼試験、焼入れ性試験、火花試験などがある。 |
座屈限界 | 座屈が生ずるときの限界の圧縮荷重(応力)。 |
サスペンション形油圧プレス | 複動又は三動プレスにおいて、プランクホルダスライドが、独立せず、絞りスライドに内臓されている形式の油圧プレス。 |
サブゼロ処理 | 焼入れした鋼を、0℃以下の適当な温度に冷却し、焼入れ後、残留オーステナイトがないように、マルテンサイト変態させ、硬化する処理(装置)。通常、冷却には一70℃程度まではドライアイスを用いるが、更に低温の場合は液体空気が使用される。サブゼロ処理後は、引き続き焼戻し処理を行うことが多い。サブゼロ処理を行うことにより、使用中の時効による変形を防止できる。深冷処理。 |
残留オーステナイト | 焼入れされた鋼の中で、オーステナイトの部が未変態のまま存在するもの。残留オーステナイトは、炭素含有量の高い鋼を高温度から焼入れした場合、あるいは水焼入れよりも油焼入れした場合に生じやすい。焼入れした鋼材が室温になったとき、引き続いて0℃以下まで冷却すると、残留オーステナイトが少なくなる。これを深冷処理(サプゼロ処理)という。 |
地きず | 鋼の仕上げ面において、そのまま肉眼によって認められるピンホール、プローホールなどによる線状のきず、非金属介在物による線状のきず、砂などの異物の介在による線状のきずなど。この場合、明らかに加工きず又は割れと認められるきずは含まない。 |
時効硬化 | 金属材料が処理後に時間とともに硬くなること。時効硬化法としては、溶体化処理後急冷する焼入れ時効と、冷間加工後時効処理を行うひずみ時効による方法とがある。時効硬化を利用したものとして、ジュラルミンや析出硬化型ステンレス鋼などがある。 |
実体鍛練 | 実体を軸の直角方向から圧することにより、その断面を減少し、長さ方向に伸ばす作業。鍛伸、伸ばし。 |
質量効果 | 質量あるいは断面寸法の大きさにより、焼入れ硬化層の相対深さが異なる現象。 |
磁粉探傷検査 | 鉄鋼材料などの強磁性体を磁化し、欠陥部に生じた磁極による磁粉の付着を利用して、欠陥を検出する非破壊検査法。磁粉の適用方法によって乾式法と湿式法が、作業方法によって連続法と残留法があり、また磁化方法には、軸通電法、直角通電法、プロッド法、電流貫通法、コイル法、極間法、磁束貫通法がある。 |
絞り | 引張試験において、試験片平行部原断面積と破断後の最小断面積との差の原断面積に対する百分率(Ao—Af)/A×100(%)。JISでは、円形断面の試験片に対してだけ規定している。 |
自由鍛造 | 主として金敷と汎用の治工具を用い、種々の部品を、各種方向から加圧変形することにより行う鍛造法で、金型に制約されない。大形品、多種少量生産方式に向いており、型打ち鍛造と大きく区別される。火造り。 |
主応力 | 一般の三軸応力状態にある物体内にある断面を考えたとき、その面上には一般に垂直応力と剪断応力、とが作用する。これらの大きさは面の方位とともに変わる。特定の面の方位においては剪断応力τが0で垂直応力だけになる。そのような面は3つあり、互いに直交し主面と呼ばれる。主面に作用する垂直応力を主応力と呼ぶ。これらの内の2つは物体のその場所に生じる代数的に最大と最小の垂直応力である。 |
主ひずみ | ひずみ状態にある物体内の任意の点において、主応力の方向においては線ひずみ成分だけが存在する。そのような特定の方向は主面に垂直な主軸で、主軸の向きのひずみは主ひずみといわれる。 |
ショア硬さ | ショア硬さ試験機において、試料の試験面上に一定の高さhoから落下させたハンマの跳ね上がり高さhから,HS=k×(h/ho)で算出される値。 |
衝撃試験 | 材料の靱性又は脆性を調べるため、試験片に衝撃荷重を加えて破断し、要したエネルギーの大小、破面の様相、変形挙動、亀裂の進展挙動などによって評価する試験。衝撃荷重を加える方法によって、衝撃引張り、衝撃圧縮、衝撃曲げ、衝撃ねじりなどの各種試験方法がある。また、用いる試験機の種類によってにシャルピー衝撃試験、アイゾット衝撃試験などと区分される。 |
上死点 | 機械プレスにおいて、スライドが上がりきった位置。 |
ショットブラスト | 遠心力又は空気の圧力でショット(鋼粒)を成形品に投射して、鍛造肌の表面を清浄にすること。球状をした微小鉄片に速度エネルギーを与え、製品などの表面に投射して、表面の酸化膜や異物を取り除き、清浄化する。ショットクリーニング。 |
ジョミニー曲線 | 鋼材の焼入れ性を試験するため、一端焼入れ(ジョミニー式験)によって得られる水冷端からの距離に対応する硬さの変化曲線。縦軸にはロックウェルC硬さ、横軸には水冷端からの距離(JISでは1.5~50mm)をとって表す。JISの焼入性保証鋼は、ジョミニー曲線の上下限の範囲入性保証鋼は、ジョミニー曲線の上下限の範囲(Hバンドという)を保証したものである。 |
しわきず | 鍛造品の表面に現れるしわ状のきず。 |
真応力 | 一様断面を持つ試験片に軸力を作用させ、変形させるとき、その荷重をそのときの真の横断面積で除した値。 |
真空熱処理 | 炉内をあらかじめ13~1300Pa程度の真空度にして行う熱処理法。真空中で加熱されるため、表面の酸化、脱炭が防止できる光輝処理である。また、加熱は輻射熱によるため、加熱速度勾配が低いことにより、ワークの内部と外部の温度差が少なく、通常の熱処理に比較して熱処理ひずみの少ない処理が可能である。 |
靱性 | 金属材料の粘り強くて衝撃破壊を起こしにくいかどうかの程度を評する性質。逆に、もろくて変形態の小さい性質を脆性という。これらの性質を調べる方法に、試片に衝撃荷重を加えて破断し、要したエネルギーの大小などにより評価する衝撃試験がある。衝撃試験には、シャルピー及びアイゾットの2種類がある。一般に、材料は、硬くなるほど、靱性が低く、もろくなる性質がある。硬くて粘り強い材料が最も高靱性である。 |
浸透探傷検査 | 製品表面に開口しているきずに浸透液を浸透させた後、拡大した像の指示模様によって、きずを観察する非破壊検査方法。染色浸透探傷検査と蛍光浸透傷検査とがある |
水素脆化 | 鋼中に吸収された水素によって、鋼材に生じる延性又は靱性が低下する現象。この現象は、酸洗、電気めっきなどの場合に生じることが多い。また引張応力が存在すると、割れに至ることが多い。 |
スケール | 鋼の加熱の際、空気中の酸素と化合した酸化鉄を作る現象を酸化といい、、酸化によって生じた皮膜をスケールという。スケールは三層から成っており、650℃ぐらいからスケールが発生し、900℃以上になると急激にスケールの厚さが増加する。また加熱時間とともにスケールの厚さも増加する。酸化すれば、焼減りし、鍛造品の肌が荒れ、焼入れの際に急冷を妨げて焼むらを作る原因となる。一般に酸素の酸化速度が、炭素の拡散速度よりも大きいときはスケールを生じ、小さいときは脱炭が起こる。 |
すべり面 | ①工具と素材が接触して滑る表面部分。②結晶レベルで転位が移動する結晶格子面。 |
成形 | 固体材料に塑性変形を与えて所要の寸法・形状の製品を作ること。フォーミング塑性加工。 |
精密鍛造 | 組立て前の仕上げ切削加工が不要か又は少なくて、付加価値の高い鍛造品を作る加工方法。具体的には、歯形など主要部分を仕上り寸法に鍛造し、鍛造できない一部のみを加工又は研磨で仕上げるように狭い公差を持ち、抜け勾配のない複雑な形状の鍛造品を作る鍛造のこと。大形鍛造品は、熱間、温間又は冷間鍛造を組み合わせた複合鍛造により成形している。 |
析出硬化 | 急冷によって過飽和に固溶された炭化物、複炭化物、若しくは化合物が、その後の時効(常温時効、高温時効)によって微粒析出しいこのために硬化する現象を析出硬化という。 |
繊維状組織 | 金属を引っ張ると、永久変形が著しくなるに従い、各結晶粒が回転して張力の方向に並ぶようになり、最後に得られる組織はちょうど繊維を束ねたようになる。このような組織を繊維状組織という。繊維状組織を示すものの機械的性質は、これと平行な方向に一般的に強い。 |
穿孔 | 治工具を用いて、径に対し長手方向に長い中空の深孔を空ける作業。深孔あけ。 |
剪断降伏応力 | 剪断降伏現象を起こさせる剪断応力。引張り又は圧縮降伏応力の約半分の値を持つ。 |
剪断速度 | 剪断加工を行うためにパンチ、型、工具等を駆動する速度。一般に剪断速度を高めるど切断された面は滑らかになる。 |
剪断ひずみ | 剪断応力によって生ずる横ずれのひずみで、最初直角であった角度の変化で定義される。 |
前方押出し | 金型内に素材を入れ、パンチの進む方向に材料を流出させ、金型の成形部あるいは金型とパンチのすき間から素材を押し出して、段付き軸や円筒状の製品を作る押出し法。この押出し方では、材料の流出方向とパンチの進む方向が同じであるため、正押出しあるいは直接押出しとも呼ばれる。 |
側方押出し加工 | パンチまたはダイの移動方向と直角(側方)に材料を流出させる押出し法。 |
塑性変形 | 固体に外力を加えて変形させた後外力を取り除いた後に残る変形。永久変形。 |
反り | 鍛造品の表面基準面からの偏り。 |
ソルバイト | マルテンサイトを500~600℃に焼戻した場合、並びに焼入れの際に、A₁変態を600~550℃で生じさせたときに得られる組織組織はα鉄と微粒セメンタイトとの混合物であり焼戻しの場合のソルバイトはセメンタイトが粒状となっており、後者の焼入れの場合は層状となっている。トルースタイトよりも軟らかいが、パーライトよりは硬くて強靱である。 |